ライフスタイルの変化や共働き世帯の増加などを背景に、時間的制約を受けず自由にモノの受け渡しが出来る専用ロッカーや宅配BOXが特にマンションなどに増えています。
宅配便が来る時間帯に自宅に居ない場合など、わざわざ再配達などを頼むことなく荷物が手に入るといったように、非常に便利な仕組みです。そして、クリーニングもこの便利な仕組みで利用されるケースが増えているようです。
このページでは、専用ロッカーや宅配BOXとクリーニングサービスにおける問題点を紹介します。
ロッカー等に対する厚生労働省による見解
クリーニング業は一般クリーニング所・取次店・無店舗取次の3つの営業形態がありますが、クリーニング業の管轄となる厚生労働省では、ロッカー等による洗濯物の受取りについては以下のような見解を述べています。
「昭和61年11月20日付け61公営698号」から回答一部省略
ロッカー等を設置又は管理し、かつ、洗濯物の引渡しを行っている食料品店等又は取次所等が、クリーニング所に該当し、ロッカー等は当該クリーニング所の施設の一部とみるべきである。
なお、ロッカー等の設置場所については、当該クリーニング所の主たる部分と一体となった状態で当該ロッカー等が設置されることを要するものであり、衛生管理及び保管管理に支障をきたさないため、当該クリーニング所の店頭等、当該クリーニング所に併設されるよう指導されたい。
つまり、ロッカー等はクリーニング所に併設されることを国は求めています。
クリーニングトラブル原因の1位がカウンターチェック不足
そこで、ロッカーや宅配BOXとクリーニングサービスにおける問題点を解説する前に、クリーニングトラブルのメカニズムをひも解いてみたいと思います。
クリーニング以外でも同様ですが、トラブルというのは被害に遭ってはじめて問題であることに気付くケースが多いと思います。つまり「失敗から学ぶ」ということが多いのが現状かもしれません。
クリーニングサービスにおいても、トラブルに遭ってはじめて「お店は選ばなければダメだ...」と気付く人も少なくないのかもしれません。
しかし、統計の結果からトラブルとなるほとんどの原因が「カウンターチェックがしっかり行われていない」ということが判明しています。つまり、受付時に洗濯物の相互確認が行われていればトラブルが避けられたというケースが非常に多いということが分かっています。更に言えば「カウンターチェックが行き届いているクリーニング店が良い」ということを知りそのようなお店を利用すれば、自らが失敗しトラブルにあうリスクを減らすことが出来る訳です。
コミュニケーション不足の原因は素人による対応だから?
カウンターチェック、つまり衣服を中心にしたお客様と店員のコミュニケーションやカウンセリングが必要なのは、やや飛躍した例かもしれませんが医師と患者の関係を例にすると分かり易いです。
実社会ではありえませんが、例えば実際に治療にあたる知識を持った医師と患者の間に知識を持たない人間が中継ぎし患者から話を聞き、それを医師に伝え、医師は薬を処方するとします。
しかし、専門知識を持たない人が患者に対し、適切な治療をするのに必要な質問などを聞き落してしまったり、患者の様子を見ながら異変に気付かないケースも考えられます。
このように個人個人体調が異なる人に向けたサービスをすることから、医療の世界では看護師という立場の人は居ても、医療知識を持たないパートやアルバイトなどが患者と接することは現在では考えられません。
衣服も状態が各々異なるからこそ専門知識が必要
衣服も実は着る人の生活習慣や意識などによって状態は異なり、シミや汚れの付き方なども千差万別です。また、衣服そのものが現在様々なタイプのものが売られていることもあり、その衣服と汚れ、お客様の好みなど複合的に考えたうえでクリーニング処理にあたる必要があります。
すると、一定の知識を持った者でなければその場で適切な処理方法が思いつかず提案出来ないばかりか、お客様に「汚れ落ちを優先するのか?それとも風合いなどを出来る限りキープするのを優先するのか?」などの判断を仰ぐことが出来ません。
つまりトラブルはこうしたコミュニケーションが行われずに、クリーニング業者とお客様双方がある種一方的な思い込みのすれ違いによって発生することが少なくありません。
クリーニングの非対面接客の問題点
クリーニングサービスは、お客様の衣服を預かりメンテナンスして返却するサービスです。また、クリーニングに出す衣服というのは概ね高価であったり思い入れがあるなど、個々の衣服に特別な"感情"が宿っているといっても過言ではありません。
このような特性を持つ大事な衣服を人的コミュニケーション無く利用するのは他にもリスクが考えられます。
しかし、現在非対面接客による専用ロッカーや宅配BOXをクリーニングに利用する人が増えているようです。
クリーニングのロッカーは2タイプあり受付は対面接客を行い返却時だけボックスを利用する「返却専用タイプ」と、受付も返却もボックスを利用する「受け渡しタイプ」が存在しますが、ここでは一切間に人が介入しない後者の「受け渡しタイプ」の問題点について触れたいと思います。
問題点1:汚れやシミの相互確認が出来ない
対面で無いことの一番の問題点が、店員との相互確認が出来ないということです。仮にシミがあった場合、何のシミか?いつ頃付けたものか?などを知る必要があります。また、取れないシミなどがあった際には、「何故取れないのか?」の説明もロッカーでは出来ません。例えばメモ書きを添えてロッカーに出したとしても文字情報だけでは感情や真意が伝わり難いこともあり、リスクがあります。
問題点2:どこがクリーニング処理しているのかが不明
例えばマンションの宅配ボックスを利用しているとすると、マンションのサービスという視点のみで見てしまい、どのようなクリーニング屋さんが処理しているのかが不明だったり、そもそも気にしたことが無いという方も多いのではないでしょうか。自分の大切な衣服を、どんな人に預けているのか?またロッカーの先に何処に持って行かれてるのか分からない...というのは、万が一のことを考えると問題があるかもしれません。
問題点3:預り証発行の有無
本来クリーニングサービスを利用する際には、クリーニング業者がお客様から預かった品物の品名や数量を記録しそれを共有する為の「預り証」が発行されます。ところが、専用ロッカーや宅配BOXサービスでは、中には預り証に代わる共有する為の書面が発行されないこともあるようです。
また、自己申告による注文書を衣服と一緒にロッカーへ入れておくタイプもありますが、例えばシャツとブラウスの違いなどクリーニングの品目に対する解釈がお互い異なるケースもあり、後々トラブルになることも考えられます。
どうしても非対面接客を利用する場合の注意点
これまで述べたように、非対面接客はクリーニングサービスの場合リスクが考えられます。しかし、どうしても時間が合わないなど、やむを得ない理由があり非対面接客サービスを利用しなくてはならない方もいるかと思われます。その場合は最低でも以下の点は注意するようにして下さい。
- どこのクリーニング店が処理を行っているのか把握しておく。連絡先も知っておくこと。
- 要望は出来るだけ具体的に伝えるようにする。
- 預けた衣服は必ず自分でしっかり把握しておく。
- 一般的なクリーニング利用方法ではないことを自覚すること。そしてそれに伴うリスクを認識しておくこと。