冬の定番であるダウンジャケットですが、「モンクレール」「デュベティカ」や「ユニクロのプレミアムダウン」などのように、トレンドアイテムとして多くの方に着用する機会が増えているようです。
しかし、家計の節約等からか洗たくやお手入れの回数が少なく、クリーニングに持ち込まれる頃には相当ひどく汚れている場合もあるようです。また、家庭洗濯のみで処理している方も増えてきていますが、本来ダウンジャケットを正しく洗うには、手間と時間と技術が必要になり、失敗すれば本来の機能を損ない、かえって寿命を短くしてしまうリスクがあります。
このページでは、ダウンジャケットについて解説します。
ダウンジャケットの仕組みを知ろう
ダウンジャケットと上手に付き合うには、「中わた」「素材と加工」「機能と特性」の3つのポイントがあります。
それでは具体的に、どういうことがポイントなのか見ていきましょう。
「中わた」の種類を知ろう
ダウンジャケットの「ダウン」とは羽毛の意味で、衣類や布団類の「中わた」には水鳥の羽毛が使われています。また、羽毛には「ダウン」「フェザー」の2種類あり、通常はこの2種類の羽毛を混合している場合が多いです。
ダウン
ダウン |
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フェザー
フェザー |
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また、フェザーは更に2種類に分けることが出来、「スモール(小)フェザー」と「ラージ(大)フェザー」に分けられます。
一般的に大きなフェザーより、小さなフェザーの方が中わた素材としての品質に優れていると言われています。
表地・裏地に使われる「素材」の種類と「加工」を知ろう
ダウンジャケットに使用される素材は、ナイロンなどの薄手の生地でしかも緻密な織物が使われているケースが多いようです。着用はもちろんお手入れするうえでも繊維のメリットやデメリットを知っておくべきです。ナイロン
軽くて丈夫。水分や摩擦に強いが吸水性が低く、日光やガスなどで黄変します。白や淡色の衣類では年数が経つと変化が目立つ。熱に弱い。色が染まり易いが、色落ちに対する強さはやや劣ります。ポリエステル
シワや型崩れに強く、乾きやすく、洗濯での伸縮も少ない為、衣料品で数多く利用されている人気のある繊維です。欠点は、吸水性が低く、静電気が生じやすいことです。また、毛玉も出来やすく、汚れも吸着しやすく、ナイロンより色落ちもし易いのが特徴です。キルティング加工
キルティング加工とは、表地と裏地を一定の範囲で縫い合わせ、生地上に空間を複数作り、中わたの目寄れを防ぐだけでなく保温効果を高めています。特性と機能
保温性
タンポポの種子のような形状をしたダウンの長い羽枝と多数の小羽枝には、お互いに絡み合わず反発しあう性質がある為、無数の小さな空間が出来ます。そしてその小さな空間に皮膚と衣類の間で出来た温まった動かない空気をたっぷりと含むことができ、冷たい外気を遮断して、熱を逃さない特徴があります。
間違った家庭洗たくや、お手入れをしないことなどで、ダウンがつぶれてしまうと、保温効果は弱まるので注意が必要です!
圧縮回復性
羽毛の羽枝、小羽枝が相互に絡み合わず反発しあう性質は、羽毛のよじれや型崩れを防止すると同時に、何回折り畳んでもすぐに元の形に戻ることも可能にしています。しかも、その反発が瞬間的なため、かさ高性もただちに回復し、羽枝の間にふたたび多量の空気を含んで保温性も保たれます。ポイント
ダウンジャケットは例えば風船の原理に似ています。生地の目の細かいナイロンやポリエステルの素材を用いて、熱をもった空気をとじこめます。そして、キルティング加工によって羽毛の動きを抑え、そのとじこめた温かい空気の分散を防ぎ、保温性を保ちます。
逆に、キルティング加工が施されていなければ、中わたは一斉に一方向に寄ってしまうばかりか、動き過ぎてしまい保温効果も本来の力を発揮しません。
知っておこう!ダウンジャケットのダメージ事例
一般的にダウンジャケットは、シーズン中に着る回数が多いにもかかわらず、洗濯やクリーニングする割合は少ない特徴があります。
そうした理由により、シーズンが終わる頃には垢(あか)や皮脂汚れや汗に加え、食べこぼしなどの汚れが生地の表面に沢山付着し、温かい空気をダウンに取り込むなど、ダウンジャケットとしての機能も衰えます。
そしていわゆる「汚れ」以外にも、ダウンジャケットのもつ特性上、ダメージが避けられない場合があります。次に紹介する3つは主なダメージ事例の一部です。
紫外線によるダメージ
左肩部分が紫外線により緑色に変色 |
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そこに、紫外線という目に見えない光のエネルギーが投射されると、化学的に結合していた染料の分子が分解されてしまうことなどが原因と言われ、「変色」や「退色」を引き起こします。これが紫外線によるダメージのメカニズムです。
酸化窒素ガスによるダメージ
部分的に茶褐色に変色している |
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例えばファンヒーターのある部屋にナイロンのダウンジャケットを掛けておくと、酸化窒素ガスの影響により変色する恐れがあります。また、クローゼットなどに保管していても、同じ部屋でガスコンロを使用していたり石油ストーブを使用していたりしても、同様のメカニズムで変色するケースがあります。
ちなみに、酸化窒素ガスによる影響はポピュラーな問題である為、本来メーカーは製品試験の中で「窒素酸化物に対する染色堅ろう度試験」という試験を行うことが望まれますが、コストや納期の問題などにより製品試験が行われず市場に出回ることもある為、注意が必要です。
コーティングの自然劣化によるダメージ
襟部分のコーティングが剥がれてる |
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そのような中でもポリウレタンを使用したコーティングは、素材の特性上必ず時間と共に劣化し、最終的にはボロボロとコーティングが剥がれます。
【参考】ポリウレタン素材の弱点を知る
ダウンジャケットと長く付き合う為の秘訣
ダウンジャケットは様々なブランドから販売される人気のあるアウターですが、デザインは様々で、高価なものもあれば低価格のものもあります。また、近頃では節約志向の家庭が増え、自宅で洗たくする人も増えているようです。
しかし、ダウンジャケットに限らず、愛着があり出来るだけ長く使用したい場合は、やはりクリーニング店にお願いすることをお薦めします。
せっかく高価なダウンジャケットを買ったのに、無理をして自宅洗いにチャレンジして失敗してしまっては、本末転倒です。
そこで、まとめとしてダウンジャケットと長く付き合う為のポイントを解説します。
製品の選び方
手で触って大きなフェザーが入っていないかを確認しましょう。また、強く押した後のふくらみの回復状態を確認しましょう。
理由としては、大きなフェザーが多くふくらみの回復が悪い製品は、自宅洗いはもちろん、適切なクリーニングを行ってもふくらみが低下する可能性があります。
日々のお手入れを欠かさない
雨などに濡れたら、しっかり拭き落としてください。放っておくと雨染みを引き起こす場合があります。認識出来る汚れもそのままにせず、しっかり拭き取るか、汚れの種類によってはクリーニング店に相談することをお薦めします。
優れたクリーニング店を選ぶ
ダウンジャケットの大きな特徴は、保温性です。その保温性を保つうえで重要なのが"ふくらみ"を損なわないことです。
汚れをしっかり落とし、ふくらみを復元するには、相応の手間と技術が必要です。
洗たく回数の少ないダウンジャケットを家庭洗たくで済まして次のシーズンまでしまうという方法は、例えば汚れが完全に落ち切れていなければ、カビや臭いを引き起こしたり、コーティングの劣化を早める原因になります。また、洗たくや乾燥に手間をかけず、また誤った方法で行えば、"ふくらみ"も本来の"ふくらみ"を取り戻すことが出来なくなります。
また、ダウンジャケットは品物によっては様々な加工が施されていたり、付属品がついていたりします。そうした加工や付属品も含めて、一番良いクリーニング方法を判断出来るクリーニング師のいるお店を選びましょう。
ダウンジャケットに限らず、知識と経験の豊富な優れたクリーニング店を選んで利用することが、衣服を長く楽しむうえでポイントになります。
こちらのページもご参考下さい→ダウンジャケットの洗濯について