化学繊維は、自然界において天然に存在している「天然繊維」とは逆に、人工的に作られた繊維を指します。
化学繊維は、大きく①再生繊維・②半合成繊維・③合成繊維に大別することができます。
ここでは、再生繊維に属する「キュプラ」についてご紹介します。
キュプラはどうやって作られるのか
キュプラはリンターと呼ばれる綿ワタの短い繊維や高純度の木材パルプを原料とし、酸化銅アンモニア溶液に溶かし、湿式紡糸法で繊維に再生されます。(※湿式紡糸法:原料を溶かした溶液の中から押し出して化学反応させ、溶剤を取り除いて繊維状にする方法)
キュプラの断面は円形で、表面も滑らかなので美しい光沢が生まれます。
キュプラの原料である綿は「天然繊維」ですが、キュプラ自体は人工的に作られた「化学繊維」です。つまり"天然繊維の肌や環境への優しさ"と"機能的な化学繊維"のハイブリットであるとも言えます。
裏方で活躍することが多いキュプラ
コートやスーツを着る時のツルツルした裏地を思い浮かべてください。ほとんどの裏地で使用されているその素材こそが、キュプラです。(製品によっては、ポリエステルや絹を用いる場合もあります)
では、なぜ裏地にキュプラが用いられることが多いのでしょうか。
キュプラはツルツルとした滑らかな肌触りと、吸湿性・保湿性を持ち合わせます。また、強度も高く静電気が起きにくいという特徴があります。
他にも似た特徴を持つ素材はありますが、高級感を保ちつつ実用性を総合的に鑑みるとキュプラが最も適した素材ということになります。
もちろんキュプラ特有の"とろみ感"のあるシャツなども商品化されていますが、洗濯による摩擦に弱く家庭でのケアが難しいため、他素材と混紡の製品が多いようです。
家庭でのケアについて
キュプラはレーヨンと似た特徴を持っていて、家庭でのケアが大変難しい素材です。
製品や他の素材との混紡率にもよりますが、基本的には家庭での洗濯はできず、できたとしても洗濯表示には「手洗い」を示す記号が付いていることが多いと考えられます。
この場合は洗濯表示に従い、洗濯機は使用せず優しく手で洗います。
また、手洗いする場合も注意が必要です。「ぬるま湯で洗うと汚れが落ちる」とよく聞くと思いますが、水が苦手なキュプラにはお湯は禁物です。確かに汚れは落ちるかもしれませんが、生地自体を傷めたり縮んだりする原因になるので元も子もありません。
手洗いは、あくまでも"日ごろの着用のメンテナンス"として考え、シミや具体的な汚れがある場合は、クリーニング店にお任せするのが安心です。
キュプラの特徴を知ろう
長所
・吸湿性、放湿性があるので着用によるべとつきがない・高雅な光沢がある
・柔らかくしなやかでドレープ性に富む
・染色性がよい
短所
・摩擦により毛羽立ちが目立ちやすい(白化)