化学繊維は、自然界において天然に存在している「天然繊維」とは逆に、人工的に作られた繊維を指します。化学繊維は、大きく①再生繊維・②半合成繊維・③合成繊維に大別することができます。
ここでは、再生繊維に属する「レーヨン」についてご紹介します。
レーヨンが生まれた理由
レーヨンの歴史は深く、19世紀後半までに遡ります。当時から天然繊維の中で最も高価であった絹は、上級階級の人々しか手に入れることができないものでした。
一般市民でも手に入れられるよう、また安定的に供給できるよう、人工的に絹を作ることを目的に開発がすすめられました。
そのため、レーヨンは別名「人絹(じんけん)」とも呼ばれます。
レーヨンはどうやって作られるのか
レーヨンの原料となる原木から精製したパルプをアルカリ処理し、二硫化炭素と反応させた後、アルカリ溶液に溶解して紡糸原液(ビスコース)とします。
この原液を凝固浴に押し出して、繊維に再生します。
凝固浴から出た繊維をローラーで延伸・巻取り・水洗・脱硫・漂白・仕上げ処理して、フィラメント(長繊維糸)となります。
レーヨンの特徴を知ろう
レーヨンは再生繊維ですが、原料が天然素材のため土に還ります。(条件あり)さらに燃やしても有毒ガスが発生されないという、地球にやさしい繊維です。
長所
・吸水性と放湿性があり着用によるべとつきがない・しなやかで豊かなドレープ性(衣服が身体に優美にまとわり、ゆったりとした襞(ひだ)が入る性質)がある
・染色性がよい
短所
・水に濡れると強度が半分に低下する・水に濡れると縮みやすく、水滴でシミができやすい
・シワになりやすい
家庭でのケアについて
雨の日に着用し水滴でシミになってしまうこともあり、すぐにお洗濯をしたい時もあると思います。しかし短所でも挙げたように、レーヨン100%の衣類(又は他の繊維と混紡であってもレーヨンの混紡率が高い衣類)は水に弱くシワにもなりやすいため、家庭でのケアが難しい素材のひとつです。レーヨン特有の"優美なとろみ感"を失わないためにも、家庭でのケアには注意が必要です。
家庭でのケアをする前に最も重要なことは「衣類に付いている洗濯表示を必ず確認する」ということです。これはレーヨンに限らず全ての素材でも言えることですが、ひと口に"レーヨン"と言っても「どの素材と混紡されているのか」、「どれくらいの混紡率なのか」など製品によって洗濯表示は違ってきます。洗濯表示に合わせたケアを心掛けましょう。
洗濯表示に「手洗い」を示す記号が付いていた場合は、洗濯機は使用せず優しく手で洗います。繊維の毛羽立ちで白化したり破れたりする原因にもなりますので、強い摩擦や強く絞ることも避けましょう。
アイロン掛けには注意が必要
レーヨンはアイロン掛けが出来る素材です。先述の通り、製品によって表示は変わりますが、レーヨンは強い熱に弱いため「低温から中温」と指定されていることが多いと考えられます。
また、レーヨンは水に弱いためスチームは使わず、あて布をして優しくアイロンを掛けます。
しかし、高価なものやレーヨンの混紡率が高い商品は、手仕上げのクリーニング店にお任せするのが一番です。