毛には羊から刈り取った「羊毛」と、羊以外の動物から刈り取った「獣毛」があります。
「獣毛」と聞くと、ゴワゴワな毛を想像し洋服には向かないと思う方もいるかもしれませんが、「カシミヤ」や「アンゴラ」、「アルパカ」などが獣毛に属します。
これらの動物たちは、温かく保湿性のある毛を纏うことで、山岳地帯や乾燥地帯の厳しい環境下でも体温を保ち生息してきました。
このページでは、繊維界において最も高級で希少な繊維とも言える「獣毛」について紹介します。
獣毛の種類を知る
カシミヤ
カシミヤ山羊の毛で、刈り取られた毛から産毛だけを選別したものを指します。
繊維は細かく、柔らかく、光沢があり保湿性に優れています。
産毛は、カシミヤ1頭から150g~200gしかとれないため、希少価値が高く極めて高価になります。(セーター1枚にカシミヤ4頭、コートは30頭が必要です。)
モヘア
アンゴラ山羊の毛で、選別された産毛を指します。
最高級品のその光沢は、"カシミヤをも超える"と称されます。
強度、弾性(もとの形にもどろうとする力)が大きく、耐久性があります。
表面が平滑で縮充性(フェルト化)は低いですが、繊維が抜けやすいという特徴があります。
ふわふわと柔らかいモヘヤは、セーターや靴下などに用いられます。
アンゴラ
アンゴラうさぎの毛を指します。極めて柔らかく色は純白です。
繊維の断面を顕微鏡で観察すると繊維の中心が空洞で、その空洞に空気を含むため優れた保温性を発揮します。
モヘアと同じく、表面が平滑で縮充性(フェルト化)は低いですが、繊維は抜けやすいという特徴があります。
触り心地や肌触りがよいため、帽子やショールなどにも用いられます。
キャメル・らくだ
双こぶらくだの産毛を指します。
らくだの毛は漂白しにくいため、多くはそのままの色で用いられます。
「キャメル」が繊維の名前でもあり、色の名前にもなっているのはそのためです。
キャメルは靴下や毛布に用いられ、汚れにくくヘタリにくいという特徴が挙げられます。
アルパカ
アンデス山岳地帯に生息するアルパカ(らくだ科)の産毛を指します。
柔らかく、表面が滑らかなため上品な光沢がうまれます。
アルパカはセーターやマフラー、ショールに用いられます。毛玉ができにくいので、比較的お手入れが簡単なのも嬉しい特徴です。
ビキューナ
アンデス山岳地帯に生息するビキューナ(らくだ科)の産毛を指します。最大の特徴は、毛類の中で最も細い繊維であることです。
細い繊維でしか生み出すことが出来ないこの肌触りは、まさに最高級品。
ビキューナ製のマフラーやショールは、エレガントでラグジュアリーな製品になります。
取扱い上の注意
獣毛製品は、羊毛(ウール)とは違い、柔らかい風合いや光沢を楽しむ言わば"嗜好品"です。実用的な衣類ではないので、着用や着用のメンテナンス・クリーニングなどには特別の注意が必要です。
具体的には...
・過激な着用や運動を避ける
・カバン、バッグ、リュックなどで擦らない
・着用時の組み合わせによっては、他の衣類に毛が付着することがある
・光沢を戻し毛玉の発生を防止するため、着用後は柔らかなブラシで毛並みの乱れを整える
・連続着用を避ける
・虫害を受けやすいため、保管の際は防虫剤が必須
・風合いを損ねるため強いクリーニングができない
つまり気軽に洗濯やクリーニングが出来ないため、そもそも「シミをつけない・汚さない」ように着用する必要があるのです。